雅峰生の手紙

私が妻や友人に宛てて書いた郵便から

手紙の過去分は順次当サイトから削除して『断章』としてまとめ、
『小説家になろう』に掲載後、 Kindle で電子書籍化しています

5760

何気無い一瞬に、非常に魅力的なシーンがあります。如何なる要素が加わっているならばその魅力が具わるのかは説明出来ません。しかし其処(そこ)にその魅力が在る、厳然と在る事だけは、疑い様がありません。感じる、と謂うよりも、判然(はっきり)と見えているからです。見えているのに、それが何なのか判らない。

これが、心の働きです。これが情感というものが達成する何ものかです。私はそれに、非常に高い価値を認めます。如何なる理知的な整合性も、これには及びません。これは人に、まだ先を生きて行こうと感じさせる、その意欲を呼び起こすからです。そんな事が理知に可能でしょうか。出来ません。私は自分の感覚、心の働きに恃(たの)み、この後も生きて行きます。屹度(きっと)、それは虚しからざるものを私に伝えてくれるでしょう。